ふるさと納税の仕組みとそれに伴う所得税・住民税の節税効果についてご紹介します。
こんなお悩みはありませんか?
- ふるさと納税の仕組みがよくわからない
- ふるさと納税で所得税はどのくらい控除されるのですか?
- ふるさと納税は住民税にも影響するのですか?
確かにふるさと納税の制度や税金面での影響は複雑で理解が難しいですよね。
- ふるさと納税の基本的な仕組みと流れ
- ふるさと納税による所得税の控除額(還付額)の計算方法
- ふるさと納税が住民税に与える影響
ここからふるさと納税の仕組みと所得税・住民税の控除についてさらに詳しくご紹介しますね。
※この記事ではふるさと納税を確定申告をする場合を想定して記事を書いています。ワンストップ制度を使っての控除については説明を割愛させていただいています。
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目次
所得税はこうして節税! ふるさと納税の免除額の計算方法
ふるさと納税とは自分の選んだ地方自治体に寄附することで所得税や住民税の控除を受けられる制度です。手続きは簡単でインターネットもしくは郵送で行うだけで行うことができます。
寄附先は自分の故郷でなくても自由に選べるのが魅力です。
ふるさと納税をすることで寄附した自治体から返礼品がもらえるというメリットは多くの方が知っていると思いますが、所得税と住民税の控除が受けられるというメリットもあります。
別の言い方をするとふるさと納税制度は「返礼品をもらえる」というだけでなく「前払いで自治体へ寄附(納税)をする代わりにお礼として翌年の住民税・所得税がお得にしますよ」という制度とも言えます。
所得税は確定申告をした日から1カ月ないし1カ月半後を目安として確定申告書類に記載した銀行口座に還付金という形でお金が口座に振り込まれます。
住民税に関してはふるさと納税をした翌年の6月以降に減税という形で適用され、どれだけ減税されたかは住民税決定通知書で確認できます。
この書類は正社員の方であれば毎年6月頃には会社から受け取れると思います。
自営業やフリーランスの方の場合ですと6月頃にに市区町村から郵送で自宅に届きます。
なお、ふるさと納税で得するのは所得税よりも住民税が多くを占めます。
ここから先では所得税と住民税がどのように控除されるのか、具体的な仕組みを見ていきましょう。
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次年度の税金にも影響大! ふるさと納税が還付される仕組み
ふるさと納税をすることで所得税と住民税の控除が受けられることを説明しましたが、いずれも計算方法が違うので先にふるさと納税ではいくらの還付金が口座に振り込まれるのか計算していきます。
所得税の還付額の計算
具体的にどのように還付金額は計算されるのでしょうか。
公式としては以下になります。
所得税の還付額 =(ふるさと納税の寄附金額 - 2,000円)×(所得税率×復興税率1.021)
※復興特別所得税…東日本大震災からの復旧・復興のための税金。平成25年から令和19年までの各年分の所得税に対し2.1%の復興特別所得税が課されることになりました。ふるさと納税を行なった場合、復興税率も控除の対象になります。
で、分かりやすくするためAさんの収入を元に計算をしていきます。
収入: 600万円 (給与所得控除:124万円)
家族構成: 配偶者あり(配偶者の所得は48万円以下のため38万円控除)、子供なし
医療費控除: 15万円
社会保険料控除: 60万円
基礎控除: 48万円 (年収2,400万円以下であれば一律48万円)
ふるさと納税額: 5万円
公式を元に今わかっているのは
所得税の還付額 =(50.000円 - 2,000円)×(所得税の税率)
という部分までですよね。
つまりまだ分かっていないのはAさんの所得税の税率の部分ということになります。
所得税の税率は1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた課税所得額が計算すればすぐ分かります。
そのため順を追ってAさんの課税所得額を計算していきます。
- 収入から給与所得控除を差し引く
- 課税所得金額を算出します。
- 所得税を算出します。
- 還付額の計算
収入から給与所得控除を差し引く
まず、Aさんの所得は以下の式で算出できます。
所得 = 収入−給与所得控除額
※所得(給与所得)…年間の給与の合計収入から給与所得控除を差し引いた(控除した)金額
Aさんの収入は600万円ですが、では給与所得控除額はいくらになるのでしょうか?
そのために以下のような表を参考に給与所得控除額を算出していきます。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
国は給与等の収入金額に応じて控除額を決めています。
Aさんの場合、収入は600万なので表の黄色のハイライト箇所にあるように収入金額×20%+440,000円をすれば控除額が164万円であることが分かります。
600万(収入金額)×20%+440,000円=164万
そのためAさんの収入から給与所得控除を差し引いた額は以下となります。
所得 = 600万円−164万円=436万円
次に課税所得額を計算していきます。
- サラリーマンは仕事をするために通勤費、書籍代、衣服代など様々な経費がかかります。
これらの経費を個別に申告するのは煩雑であるため給与所得控除という形で一定額を概算で控除しています。
課税所得額の算出
課税所得金額は以下の公式のように所得金額から各種所得控除を差し引いて算出します。
課税所得金額 = 控除後所得−所得控除(今回の場合だと配偶者/社会保険料/基礎控除が対象)
また、各種控除の種類は以下の通りです。
- 医療費控除
- 生命保険料控除
- 社会保険料控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
ここでもう一度Aさんの現状を見てみましょう。
各種控除額は黄色のハイライト部分になります。
収入: 600万円 (給与所得控除:124万円)
家族構成: 配偶者あり(配偶者の所得は48万円以下のため38万円控除)、子供なし
医療費控除: 15万円
社会保険料控除: 60万円
基礎控除: 48万円 (年収2,400万円以下であれば一律48万円)
ふるさと納税額: 5万円
そのため控除後所得から所得控除を引くと以下のようになります。
課税所得金額 =436万円−(38万円+15万円+60万円+48万円)=275万円
Bさんの課税所得が275万円であると分かりましたね。
- 個人個人の事情を考慮して税負担を軽減させるため
所得税の算出
ここまで来ればいくら還付金が入るのか?という疑問の解消はすぐそこです。
課税所得額は以下の表に基づき所得税の税率が決まります。
課税所得 | 所得税率 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 33% |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% |
40,000,000円 以上 | 45% |
※出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
275万円は表の黄色のハイライト箇所にあるように10%が所得税率となります。
還付額の計算
最初にお伝えしたようにふるさと納税控除額は寄付額の2,000円を除いた金額となります。
所得税の還付額 =(ふるさと納税の寄附金額 - 2,000円)×(所得税率×復興税率1.021)
※復興特別所得税…東日本大震災からの復旧・復興のための税金。平成25年から令和19年までの各年分の所得税に対し2.1%の復興特別所得税が課されることになりました。ふるさと納税を行なった場合、復興税率も控除の対象になります。
そのためこの公式に当てはめると
所得税の還付額 =(50,000 - 2,000円)× 10% × 1.021= 4,901円(端数切り上げ)
このためAさんは確定申告をした日から1カ月ないし1カ月半後が目安で確定申告時に記載した銀行口座に4,901円が振り込まれます。
住民税控除額の計算について
次に住民税の控除額を見ていきましょう。
ふるさと納税制度を利用した住民税控除額の計算には基本分と特例分の2つがあり、基本分と特例分の合算値が翌年の住民税から控除される額となります。
それでは基本分と特例分の分けて計算方法をご紹介します。
基本分の計算方法について
住民税からの控除(基本分)の計算式は以下の通りです。
住民税からの控除額(基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)× 10%
そのためAさんの基本分の住民税控除額は4,800円 になります。
(50,000円 – 2,000円) × 10% = 4,800円
特例分の計算について
一方、特例分の住民税からの控除は「(寄附金額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)」という式で計算することができ少し複雑に感じると思います。
住民税からの控除額(特例分)
=(寄附金額-2,000円)×(90%-所得税の税率×1.021)
上の公式に当てはめると計算過程は以下のようになります。
住民税からの控除額(特例分) = (50,000円 – 2,000円) × (90% – 10% × 1.021)
住民税からの控除額(特例分) = 48,000円 × 90% – 10.21%
住民税からの控除額(特例分) = 48,000円 × 79.79%
住民税からの控除額(特例分) = 38.299円(端数切り捨て)
そのためAさんの特例分の住民税控除額は38.300円 になります。
つまりAさんは3万円の寄付をすることで翌年度から基本分と特例分を足した43.099円の住民税が控除されます。
寄附金 50,000円 | 【所得税】 (50,000円-2,000円)×10%×1.021=4,901円 | 所得税と合わせた控除額 48,000円 |
【住民税(基本分)】 (50,000円-2,000円)×10%=4,800円 | ||
【住民税(特例分)】 (50,000円-2,000円)×(90%-10%×1.021)=38.299円 | ||
実質負担2,000円 | 負担額 2,000円 |
ここまで見た来たようにふるさと納税の実質負担2000円を払うことで所得税は還付金という形で還元され、住民税は控除という形で安くなります。
なのでふるさと納税は基本的に税金を前払いすることで後で還元を受ける仕組みだと思っていて間違いはないと思います。ただ、注意しないといけないのはお金に余裕がある時にふるさと納税をするということです。
所得税の還付も住民税の控除もふるさと納税の寄付を行なってから割と間が空くということです。
例えば2024年1月にふるさと納税をしたとします。
通常確定申告は毎年3月15日が締め切りなため仮に2025年3月15日に申請をした場合、還付金が口座に入るのは2025年4月15日前後、遅くとも4月末頃になります。
そして住民税は2025年6月以降の住民税から控除されます。
このような流れになるため資金に余裕がある際にふるさと納税をすることをおすすめします。
注意事項
上記は試算であり実際の所得税・住民税は、個人の状況によって異なります。
ふるさと納税控除を受けるためには確定申告が必要です。
寄付先の自治体によっては、独自の控除制度がある場合があります。
ふるさと納税の上限額は? 所得税と住民税の控除限度額を解説
ここまで読んだ方の中には「じゃあふるさと納税をしまくればかなり節税できるんじゃないのかな?」と思った方もいるのではないでしょうか?
残念ながらそんなことはなくふるさと納税には上限額が存在します。
上限額を超えた場合は、控除の対象とならず自己負担となるので注意が必要です。
「今年はいっぱいふるさと納税で寄付して返礼品をたくさんもらって来年は節税しよ〜!」と思っていても実は無制限に寄付できるわけではありません。
つまりふるさと納税をたくさんしたからといって2000円を超える部分全てが控除されるわけではなく、上限額を超えた分は自己負担となり結果的に「地方自治体に寄付しただけ」ということになりかねません。それでも地方自治体側から寄付(税金)が入ってくるのでとても嬉しいことなのですが、ふるさと納税した本人側からしたらあまり嬉しくないと思います。
そうならないように予め自分の限度額はいくらか?ということを把握しておく必要があります。
以下に早見表があるので事前に限度額を把握することが重要となります。
ちなみに以下にBさんを例にいったいBさんのふるさと納税の上限額はいくらなのでしょうか?
ここから先で見ていきましょう。
収入: 400万円 (給与所得控除:124万円)
家族構成: 配偶者なし、子供なし
医療費控除: 10万円
社会保険料控除: 40万円
基礎控除: 48万円 (年収2,400万円以下であれば一律48万円)
限度額を計算するにあたり前提となるのが以下の公式です。
所得割額(個人住民税所得割額)×20%÷(90%-所得税率×1.021)+2,000円
この公式を見て「所得割額(個人住民税所得割額)って何?」と思った方も多いと思います。
所得割額とは個人がその能力(いわゆる所得)に応じて納める税のことで、一般的に所得割額は課税総所得金額の10%が目安となります。
そのためBさんのふるさと納税をする際の上限額を算出する前に所得割額を算出する必要がありそうですね。Bさんの上限額を算出するステップは以下4つです。
- 収入から給与所得控除を差し引く
- 課税所得金額を算出します。
- 所得割額を算出します。
- 限度額計算
収入から給与所得控除を差し引く
まず、Bさんの収入から給与所得控除額を引くと所得金額は276万円になることが分かります。
所得金額= 400万円−(400万円×20%+440,000円)=276万円
課税所得額の算出
課税所得金額は先ほど求めた所得金額276万円から各種所得控除額を差し引いて算出します。
Bさんの課税所得金額は178万円であることが分かりました。
課税所得金額 = 276万円 − 各種所得控除額
(10万円+40万円+48万円)=178万円
所得割額の算出
ここまで来ればあとはとても簡単なのですがBさんの課税所得額は178万円なので、Bさんの所得割額は178万円 × 10% = 178,000円となります。
そのため178,000円 × 25.065% + 2,000円 = 46,616円(端数切り上げ) が所得控除の限度額の目安となります。
限度額計算
最初にお伝えした通り、限度額の計算式は以下となります。
所得割額(個人住民税所得割額)×20%÷(90%-所得税率×1.021)+2,000円
この公式に当てはめると
178,000円 × 20% ÷ (90%-10% × 1.021) + 2,000円 = 46,617円(端数切り下げ)
このためBさんがふるさと納税をする際の限度額は46,617円であることが分かりました。
つまりBさんが5万円のふるさと納税をした場合は余分に寄付をすることになり控除を受けることができなくなるが分かりました。
また、限度額を計算する際に1つ注意点があります。
それは所得割額はその年の所得に応じて金額が決まるため所得が確定しないうちに正確な限度額を算出することはできません。しかし、所得や家族構成等にあまり変化がない方の場合であれば、前年の所得を元に大まかな限度額の目安を確認できます。
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